2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧
空蝉《うつせみ》の尼君の住んでいる所へ源氏は来た。 そこの主人《あるじ》らしくここは住まずに、 目だたぬ一室にいて、住居《すまい》の大部分を仏間に取った空蝉が 仏勤めに傾倒して暮らす様子も哀れに見えた。 経巻の作りよう、仏像の飾り、ちょっとし…
新年騒ぎの少し静まったころになって源氏は東の院へ来た。 末摘花《すえつむはな》の女王《にょおう》は無視しがたい身分を思って、 形式的には非常に尊貴な夫人としてよく取り扱っているのである。 昔たくさんあった髪も、年々に少なくなって、 しかも今は…
春の花を誘う夕風がのどかに吹いていた。 前の庭の梅が少し咲きそめたこの黄昏《たそがれ》時に、 楽音がおもしろく起こって来た。「この殿」が最初に歌われて、 はなやかな気分がまず作られたのである。 源氏も時々声を添えた。 福草《さきぐさ》の三つ葉四…
【🌹源氏物語750 第23帖 初音9】明石の御方の元に泊まった源氏は紫の上の機嫌をとる🤭「うたた寝をして、寝入ってしまった私を、迎えにもよこしてくれませんでしたね」紫の上が無視するので狸寝入りをする。
源氏はまだようやく曙《あけぼの》ぐらいの時刻に南御殿へ帰った。 こんなに早く出て行かないでもいいはずであるのにと、 明石はそのあとでやはり物思わしい気がした。 紫の女王はまして、失敬なことであると、 不快に思っているはずの心がらを察して、 「ち…
【島々の生成】 ——神が生み出す形で國土の起原を語る。—— そこで天の神樣方の仰せで、 イザナギの命《みこと》・イザナミの命《みこと》御二方《おふたかた》に、 「この漂つている國を整えてしつかりと作り固めよ」とて、 りつぱな矛《ほこ》をお授けになつ…
光源氏36歳の春から夏の話。 3月20日頃、源氏は春の町で船楽(ふながく)を催し、 秋の町からも秋好中宮方の女房たちを招いた。夜も引き続いて管弦や舞が行われ、 集まった公卿や親王らも加わった。 中でも兵部卿宮(源氏の弟)は玉鬘に求婚する一人で、源氏…
イザナギの命とイザナミの命 【天地のはじめ】 ——世界のはじめにまず神々の出現したことを説く。 これらの神名には、それぞれ意味があつて、 その順次に出現することによつて世界ができてゆくことを述べる。 特に最初の三神は、抽象的概念の表現として重視さ…
【平家物語150 都帰り】十二月二日の日、都がえりとなった。京に帰るというので人々は急ぎ争って上れば、もはや福原のことなど口に出す者もいない。困ったのは民。家も財も捨てて京に上るものは少なくなかった。
新都福原に強引に都を移し、内裏殿などを急造してはみたものの、 福原の人気は悪かった。 それに地形も宜しくない。 北に山々が高くそびえ、波の音は騒がしく、潮風はきびしい。 新院もそのためかご病気がちである。 君も臣もこの地を嘆くことしきりであった…