2023-03-25から1日間の記事一覧
源氏にも頭中将にも第二の行く先は決まっていたが、 戯談《じょうだん》を言い合っていることがおもしろくて、 別れられずに一つの車に乗って、 朧月夜《おぼろづきよ》の暗くなった時分に左大臣家に来た。 前駆に声も立てさせずに、そっとはいって、 人の来…
「あまりにまじめ過ぎるからと 陛下がよく困るようにおっしゃっていらっしゃいますのが、 私にはおかしくてならないことがおりおりございます。 こんな浮気なお忍び姿を陛下は御覧になりませんからね」 と命婦が言うと、 源氏は二足三足帰って来て、笑いなが…
源氏は言っていたように十六夜《いざよい》の月の 朧《おぼ》ろに霞《かす》んだ夜に命婦を訪問した。 「困ります。こうした天気は決して音楽に適しませんのですもの」 「まあいいから御殿へ行って、 ただ一声でいいからお弾《ひ》かせしてくれ。 聞かれない…
源氏の君の夕顔を失った悲しみは、 月がたち年が変わっても忘れることができなかった。 左大臣家にいる夫人も、 六条の貴女《きじょ》も強い思い上がりと 源氏の他の愛人を 寛大に許すことのできない気むずかしさがあって、 扱いにくいことによっても、 源氏…