2023-03-24から1日間の記事一覧
「それくらいのことでいばらせないぞ、 大将さんの引きがあると思うのかい」 などと言うのを、 供の中には源氏の召使も混じっているのであるから、 抗議をすれば、いっそう面倒になることを恐れて、 だれも知らない顔を作っているのである。 とうとう前へ大…
「書きそこねたわ」 と言って、 恥ずかしがって隠すのをしいて読んでみた。 『かこつべき 故を知らねば おぼつかな いかなる草の ゆかりなるらん』 子供らしい字ではあるが、将来の上達が予想されるような、 ふっくりとしたものだった。 死んだ尼君の字にも…
「少納言の所で私は寝るのよ」 子供らしい声で言う。 「もうあなたは乳母《めのと》などと寝るものではありませんよ」 と源氏が教えると、悲しがって泣き寝をしてしまった。 乳母は眠ることもできず、ただむやみに泣かれた。 明けてゆく朝の光を見渡すと、 …
源氏は無心によく眠っていた姫君を抱き上げて目をさまさせた。 女王は父宮がお迎えにおいでになったのだと まだまったくさめない心では思っていた。 髪を撫《な》でて直したりして、 「さあ、いらっしゃい。宮様のお使いになって私が来たのですよ」 と言う声…