さすがに出かけの声をかけに源氏は夫人の所へ来た。
「女五の宮様が御病気でいらっしゃるから
お見舞いに行って来ます」
ちょっとすわってこう言う源氏のほうを、
夫人は見ようともせずに姫君の相手をしていたが、
不快な気持ちはよく見えた。
「始終このごろは機嫌が悪いではありませんか、
無理でないかもしれない。
長くいっしょにいてはあなたに飽かれると思って、
私は時々御所で宿直《とのい》をしたりしてみるのが、
それでまたあなたは不愉快になるのですね」
「ほんとうに長く同じであるものは悲しい目を見ます」
とだけ言って向こうを向いて寝てしまった女王を
置いて出て行くことはつらいことに源氏は思いながらも、
もう御訪問の報《しら》せを宮に申し上げたのちであったから、
やむをえず二条の院を出た。
こんな日も自分の上にめぐってくるのを知らずに、
源氏を信頼して暮らしてきたと寂しい気持ちに夫人はなっていた。
🪷🎼#あの日も雨 written by#yuhei komatsu
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